スマホ 心臓病患者救え 

20120116日 アサヒコムにて掲載

 

 

 心筋梗塞(こうそく)など緊急処置が必要とされる心臓病の治療に役立てようと、県立総合病院(静岡市葵区、神原啓文院長)が、スマートフォン(多機能型携帯電話)などを使った心電図送受信システムを開発した。救急医療現場や医療過疎地で従来より素早い心臓病治療が可能になるとして、開発者らは「配備が進めば画期的」と期待している。

 県立総合病院がシステム開発

 このシステムは、文庫本サイズの「ポータブル心電図」とスマホやタブレット端末などを近距離無線通信でつなぎ、心電図の画像をスマホなどを通してリアルタイムで病院のパソコンへ送信するシステム。心電図の画像はスマホなどに無線で送られ、スマホからは電子メールに添付する方法でパソコンへ送信することができる。スマホやタブレット端末は、基本ソフト「アンドロイド」を搭載しているものであれば、アプリケーションを無料でダウンロードして使えるという。

 ハンガリーの医療機器メーカー「ラブテック社」と共同開発した同病院院長代理の野々木宏医師は、このシステムを「富士山(ふじやま)」と命名。川根本町の診療所などに配備し、すでに実証実験を始めているという。

 システム最大の利点は「正確な診断を素早くできる」こと。心筋梗塞(こうそく)の診断に不可欠とされる「12誘導心電図」は大型で高価なため、これまで救急車などへの配備は進んでいなかった。医師法の制限で救急隊員は現場で診断はできず、患者を病院に運んでから医師が心電図を使って診断していたため、治療開始まで時間がかかることが問題となっていた。

 現場から心電図が送られれば、病院側が前もって受け入れの準備や治療チームの招集ができるようになり、野々木医師は「心筋梗塞の治療時間を30分は短縮できる」と胸を張る。

 ポータブル心電図やスマホの配備は救急車や診療所を中心に進めなければならないため、普及には行政の後押しが不可欠。野々木医師は「我々としても働きかけなければならない」というとともに、「心筋梗塞の治療問題は世界共通なので、ゆくゆくは世界に広げていきたい」と話している。(後藤遼太)

 

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